無人航空機操縦士の国家資格って必要なの?

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2023年の12月に航空法が大幅に改正され、ドローンの国家資格として無人航空機操縦士制度が創設されました。ドローンを飛ばすのに、この資格の取得がなぜ必要なのかを解説します。

無人航空機操縦士の技能証明には、今のところ免許的な観点での効果はほとんどありません。でも、仕事でドローンを飛ばす人には、僕は取得をお勧めしています。

それはなぜかというと、事業でドローンを運用する場合は、特に運航の安全が重視されるからです。無人航空機操縦士の資格取得の過程では、このリスク管理技術をしっかりと学ぶことができます。(特に一等無人航空機操縦士)

レベル4飛行ポータルサイト

【1】型式認証された機体はまだ少ない

 

2023年12月に航空法が大幅に改正された際に、ドローンを製造するメーカーに「型式認証」という車の型式認証と同様の認可制度が課されるようになりました。

この型式認証には、1等型式認証と2等型式認証の2種類があります。

特に1等型式認証は、カテゴリー3飛行(レベル4飛行とも言う。人口密集地域の上空を目視外飛行で飛ばす)を行う時に使う機体に必須となる認証です。

カテゴリー3飛行を行うには、1等型式認証を受けて機体認証を取った機体を、1等無人航空機操縦士が飛ばすこと、その際にリスク評価を行なって安全対策のための飛行マニュアルを作ること、その上で飛行許可を申請して許可を得ることが法的に必須とされています。

2等型式認証は、カテゴリー2飛行(人口密集地域の上空を目視内飛行で飛ばす)ための型式認証です。

一般的に、点検や測量など業務利用のほとんどは人口密集地域(DID)で行われることが多く、2等型式認証を受けて機体認証を取った機体を2等無人航空機操縦士が飛ばす場合は、特に飛行許可の申請が不要になるメリットがあります。

ところが、2024年9月現在、1等も2等も、この型式認証を受けた機体が数機種程度しかありません。

(メーカー側の負担が大きすぎて経済的なメリットがないため、型式認証は取得しないという判断をしているメーカーが多い)

日本国内で最も利用されているドローンを製造しているDJI社も、1等も2等とも認証取得を行なっていませんし、今後も取得予定はないと言い切っています。

このように型式認証を取得した機体がないために、1等も2等も、無人航空機操縦士の資格があっても、免許という意味でのメリットは残念ながら非常に少ないのが現状です。

また、原則飛行が禁止される特定飛行であっても、カテゴリー2飛行までなら航空局から飛行許可を貰えば飛ばせるので、許認可の上では無人航空機操縦士の資格は必須ではありません。

【2】業務での安全管理を確実に行うために

 

ではなぜ、わざわざ時間とお金を費やし、無人航空機操縦士の国家資格を取る必要があるのでしょうか?

それは、業務でドローンを運用する際は、許認可上のメリットよりもはるかに重要なこと、つまり運航の安全管理を確実に行うことが義務付けられるからです。

特に、点検や測量業務の多くは、人の往来や車の交通量の多い人口密集地域(DID)で行うことが多く、万が一衝突や墜落事故が起きたらその被害は甚大で、補償のために会社が吹き飛んでしまうこともあり得ます。

人口密集地域(DID)でのドローン運用を自粛するのも1つの選択肢には違いありませんが、それでは業務の効率化は行えませんから、そういう消極的な姿勢ではなく、

業務上の運航のリスクをきちんと評価して、評価の予測されるリスクに対して適切な対策を打つことで、事故の発生を防止して安全にドローンを運用するという前向きな方法をお勧めしています。

無人航空機操縦士の国家資格者はこのリスク管理のプロです。無人航空機操縦士の資格取得の過程で、このリスク管理技術をしっかりと学ぶ機会があります。

筆者も、現在、二等資格から一等無人航空機操縦士へのステップアップにチャレンジしていますが、この一等資格の勉強をしながら、航空局が推奨しているリスク管理を徹底的に学び研究しました。

このように、業務のためにドローンを運用する際は、(なんちゃってパイロットではない)リスク管理をきちんと行えるプロのパイロットにお任せいただくことが最良の方法だと思います。

【3】航空局が推奨するリスク評価ガイドライン

 

このリスク管理ですが、ある人が問題視したことを別の人が違う評価をすると言うように、パイロット個人の経験や知識の偏りによってリスク評価の結果がバラつくことが予想されます。

この個人の経験による評価のバラツキを最小限にとどめるため、航空局は「安全確保措置検討のための無人航空機の運航のリスク評価ガイドライン」(長いので以降、ガイドラインと呼びます)と言う基準を公開しています。

元々はカテゴリー3飛行を申請するためのリスク評価のための基準ですが、非常に網羅的にリスク評価が行えるので、点検や測量といったカテゴリー2飛行でも、安全運航の管理上、大変参考になるものです。

筆者も3ヶ月ほどかけて、点検業務などのカテゴリー2飛行を対象に、このガイドラインを使用してリスク評価を行なって、安全管理のための飛行マニュアル(雛形)を作成し、航空局にも提出しました。

(許認可上はここまで厳しいものは必要ないけれど、社内教育には非常に有効とのコメントをもらっています)

人口密集地域(DID)での点検業務を安全に行う上で課題を感じておられる方がいれば、このマニュアルをご提供した上で飛行スタッフの教育なども実施いたしますので、気軽にお声がけください。

この飛行マニュアルを抜粋したサンプルを以下に4つほどご紹介します。
 
<空域管理の考え方↓>
空域管理の考え方
 
<運航計画のサンプル↓>
運航計画のサンプル
 
<空中リスクの評価↓>
空中リスクの評価
 
<運航の安全目標とマニュアルの記載位置↓>
運航の安全目標とマニュアルの記載位置