ドローンには風が大敵!(後編)

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前回から、ドローンの安全運航に重大な影響を与えるGPS制御の喪失がどんな時に起こるのか、どんなことに注意しなくてはならないかについて解説しています。

今回は後編として、ドローンを運航させている時に発生する危険について解説をいたします。

GPS衛星測位

【1】崖や滝などによるGPS電波の遮断

 
GPS衛星はドローンから見て南側の上空にありますから、北側の崖の下に下ろしたり、滝を下って撮影する場合などは注意が必要です。

空撮に夢中になって、崖の下や、滝の影でGPS衛星の電波が届かない場所に入り込んでしまうと、途端にATTIモードに切り替わってしまいます。

ATTIモードに切り替わると、地上から30m以上の高度に上昇させることができません。(最高高度制限)

こうして、操縦者のいる離陸場所にドローンを回収することができなくなってしまいます。そのうち、バッテリーが消耗すると、その場に強制着陸を試みますので、最悪は水没したり、山林の中に落ちてしまいます。

ATTIモードになったら、GPS電波が捕捉できる位置まで水平に移動すれば電波は回復するのですが、植生が生い茂っている場所や、狭い空間ではそれもできません。こうしてドローンをロストした事例がたくさん報告されています。

滝や崖の下

【2】ビルが林立する街中での乱反射

 
ビルの外壁点検などは、建築物が乱立する街中で実施することが多いですが、ビルの壁面にGPSの電波が反射し、直接入射した電波と反射した電波が干渉を起こすために、GPSは正しい位置を測位することができなくなります。これをマルチパス現象といいます。

この場合も、GPS測位が機能しなくなった途端ATTIモードに移行するので、ビル風などが吹いている環境では即座に煽られ、とんでもない方向に飛び始めることになり非常に危険な状態になります。

このため、ビルの赤外線点検などを行う産業機では、RTKモジュールといって、電波干渉や磁気干渉を軽減する機能が付いた機体が使われることが一般的です。

ビル街

【3】高圧電線などによる磁気干渉

 
高圧電線や変電設備の近傍など電磁界の中を飛行させると、電磁誘導現象によってGPSの測位機能が異常をきたしたり、映像電波や操縦系統の電波の乱れが生じ、大変危険な状態になることがあります。

また、橋梁など鋼材が大量に使用されている構造物の近くでも、磁気干渉が発生する恐れがあります。

場所が場所なので、こんなところで制御喪失などが発生すると、社会インフラに重大な損傷を与える事故が起きかねません。

磁気干渉への対策としては、やはりRTKモジュールを搭載した産業機を利用することで、影響を最小化する試みが一般的です。

高圧電線

このように通常であれば初心者でも容易に飛ばせるドローンですが、GPSが切れてしまうと、とんでもなく取り扱いに苦労する難易度の高い機械になります。

趣味で人気(ひとけ)のない空域で事故を起こしても自己責任で済みますが、業務となると街中やインフラの近傍で運用することがほとんどなので、事故を起こすと社会的責任を問われかねません。

従って、普段からGPSが切れた万が一の状態を想定して、日常から不測の事態に対応するための訓練をしておくことをお勧めします。

当事業所でも、業務のための安全運行の指導サービスを行なっていますので、気軽にご相談ください。