安全の仕組みを作る! 第1回 ー組織的な対策の必要性ー
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ドローンを業務で活用する際は、プライベートの時以上に安全に気を配らねばなりません。
現状では多くの会社が、無人航空機操縦士の国家資格の取得など、個々のパイロットの力量に依存している状態ですが、
業務活用時の安全を確保するには、パイロットの技量の向上は必要な課題のほんの一部分に過ぎません。
個人的な努力に依存するだけではなく、会社組織としてと取り組まないと「避けることが出来ないリスク」が多々あります。
そこで、ドローンの産業利用における安全運航の仕組みづくりをテーマに、組織で整備しなくてはならない課題について、今後数回に分けてお話をします。
【1】裾野の広がりに伴って拡大する事故の危険性
農薬散布や太陽光パネルのクラスタ点検や測量などでの活用を中心に、ドローンは様々な産業分野での利用が広がりつつあります。
特に、赤外線カメラを活用した建築物の外壁剥離の点検、屋上防水の点検、工場設備の点検など、人工密集地域における活用が始まっており、今後もドローンの活用は多くの産業で拡大していくことが予想されます。
それに伴って、一定の確率で事故が発生することが予想されます。特に人口密集地域での飛行や、自動航行による目視外飛行などは、わずかな不測の事態が大きな被害を伴う事故につながる恐れがあります。
現在、ドローンの活用においては航空法などによる規制は行われていますが、飛行計画の申請に必要な対策(例えば補助者の配置など)以外は、各々のドローン事業者に一任されている状態で、さらに多くの会社においては、パイロット個人の取り組みに依存しているのが現状です。
【2】安全運航には組織としての取り組みが必要
業務中、万が一事故が起きれば、補償や弁済などで会社は吹き飛んでしまいますし、仮に費用面は保険などで対応できたとしても、会社の社会的信用は大きなダメージを受けてしまいます。
また、パイロット個人の意識や努力によって、会社の運航の安全性のレベルが左右されていたとなれば、これは大きな問題となります。
例えば、11月18日と25日の「ドローンには風が大敵!(前編・後編)」でお伝えしたGPS電波の喪失防止や電磁気障害対策のためのRTK装備の導入や、
人口密集地域における点検に際しての安全基準の設置や対策など、
組織的にやらないとできないことが非常にたくさんあるのです。
パイロットが腕を磨くだけではなく、組織でやるべきことをやらないと安全な運航が実現できないのは明白です。
【3】安全運航には組織のマネジメント活動が必要
組織的な安全対策は、飛行の時だけの注意ではなく、パイロットの体調管理など日常から継続的に行わねばならないものがあります。
また、飛行経験を重ねるに従って新たなリスク要因に氣付くことが普通ですから、
飛行が終わるたびに、事故になりそうなインシデントがなかったか、見落としていたリスク要因がなかったかを振り返って、安全のレベルを高めていく必要があります。
従って、安全運航は各種のISO認証 やプライバシーマークと同じように、PDCAによる組織的・継続的な改善活動として実施するのが望ましいと言えます。
現在は、経済産業省が同じ空域を飛行する複数のドローンの衝突を防止するUTMと呼ばれるシステムの規格をISOに提唱し(ISO23629ー5)、福島ロボットテストフィールドなどで実証実験が繰り返されており、
民間のドローン事業者においては自律的なリスクマネジメントの実施が望まれている段階で、まだISOのような認証システムは制度化されていませんが、
このような組織的な活動は一朝一夕にできるものではありませんから、できるだけ早く自主的・組織的なマネジメント活動への取り組みを始めることをお勧めします。