ドローンには風が大敵!(前編)

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ドローンを飛ばすときに注意しなくてはならない気象条件が風です。実はドローンは、GPSによる位置制御がしっかり効いている状態なら、少々の風でビクつくことはありません。それならどうして風に注意が必要なのでしょうか?

実はドローンは、補足するGPS衛星の数が不足すると自動的な位置制御ができなくなります。そして、このGPS制御の喪失は、結構な頻度で起こるのです。

GPS制御が喪失して自動的な位置制御ができなくなると、わずかな風でも、あっという間にとんでもない方向に勝手に飛び出し、大変危険な状態になります。(大抵の場合、衝突や墜落事故につながる)

ドローンの安全運航を維持するために、このGPS制御が喪失がどんな時に起こるのか、どんなことに注意しなくてはならないかについて、これから2回に分けて説明します。

GPSによる測位

【1】GPS制御の喪失が発生する原因

 

理論的にはGPS測位に必要な衛星の数は最低4個です。4個の衛星からの電波を受信できれば、ドローンは飛行中の座標を特定して、指定された位置に静止することができます。

<GPSによる測位の原理>
GPSによる測位の原理

しかし、GPS衛星の電波は、成層圏にある電離層の状態、対流圏の気象条件、周辺の地形、建築物や構造物からの反射、高圧電線や鋼材などの磁気干渉など、非常に多くのものから影響を受けるので、測位に使える衛星は常に変化します。

従って実際には、測位の誤差を補正し、より正確な位置を特定するために、できるだけ多くの衛星を捕捉して測位が行われます。

DJI機の場合、Pモードでは最低8個の衛星を掴んでいないとGPSによる測位は機能しません。条件が良い場合には20個程度の衛星を捕捉します。また、産業機など、より安全と高い精度が求められる機体では、30個程度の衛星を捕捉して測位が行われます。

<Pモードのモニタ画面>
Pモードのモニタ画面

このGPS測位に必要な数の衛星が捕捉できないと、途端にGPS測位を使用しない飛行モード(最悪の場合はATTIモード)に切り替わり、操縦するパイロットが手動で位置を保持しなくてはならなくなります。ここで風(わずかな空気の流れ)があると、ドローンは瞬時に、全く見当違いの方向に飛び始めるのです。

<ATTIモードのモニタ画面>
Pモードのモニタ画面

人間というものは不意を突かれると、なかなか対処することができません。慣れた人でも予想外の突然方向に動きだしたドローンの向きを即座に判断して、静止させるのはかなり難易度が高いです。こうしてかなりの確率で衝突事故につながります。

【2】GPSの補足を終えないうちに離陸(初心者)

 

GPSが効いている状態でプロペラを回転させ始めると、しばらくして「ホームポイントが更新されました」というガイド音声が送信機から聞こえます。

この音声ガイドはGPS測位に必要な衛星を捕捉してGPS測位を開始したという合図です。このアナウンスが出る前に離陸させると、ビジョンシステムモードで離陸させることになります。

ビジョンシステムモードではビジョンセンサーの視覚情報のみで位置制御を行う飛行モードなので、甚だ脆弱な位置制御機能しか機能しないため、風の影響をかなり強く受けてしまいます。

<ビジョンシステムモードのモニタ画面>
ビジョンモードのモニタ画面

筆者もドローンを始めたばかりの時、強風が吹いている海岸で、この音声ガイドが聞こえる前にドローンを離陸させた途端、まだGPS制御が機能していなかったためか、たちまち強い横風に煽られてドローンが湾内に飛ばされ、水没一歩手前になってしまったことがあります。

それ以来、必ず「ホームポイントが更新されました」の音声ガイドが聞こえてから離陸させること、必ず風上に向けて離陸させること、の2つを徹底しています。

今回は、GPS測位が機能しなくなる要因と、初心者が起こしやすいミスについて解説しました。次回も引き続き、業務での利用時に発生しやすいリスクについて解説します。