ロバスト性を用いたリスク管理!(安全の仕組みを作る 第2回)

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12月12日に、「運航のリスク」を評価して、予測されるリスクを防ぐ対策を、組織的に実施する重要性をお話ししましたが、

「運航のリスクを評価する」ことを「リスクアセスメント」と言います。

今回は、航空局が推奨する「リスクアセスメント」についてお話しします。

これを知らずにドローンを業務で運用しているドローン事業者はモグリと言っても良いほど重要なものです。

リスクアセスメント

【1】リスク評価の共通言語

 

運航のリスクには多くの要素があり、パイロット個人の技量でコントロールできることは、そのうちのほんの一部にすぎません。

ドローンの運航に関しては、国土交通省から「無人航空機の飛行の安全に関わる教則」というガイドラインが公開されており、

無人航空機操縦士の国家資格(学科試験)や、各地のドローンスクールにおける教育などで活用され、

今やこの教則が全国的に、航空法などの関連法規にもとづいたドローンの運航のための共通言語となっています。

(無人航空機の飛行の安全に関する教則)

教則

この教則の「第6章 運航上のリスク管理」というパートで、

リスク評価に当たっては「安全確保措置検討のための無人航空機の航行リスク評価ガイドライン」(以下、長いので「リスク評価ガイドライン」と呼びます)の利用が推奨されています。

(教則の「第6章 運航上のリスク管理」)
運航のリスク管理

(安全確保措置検討のための無人航空機の運航のリスク評価ガイドライン)
リスク評価ガイドライン

本来は一等無人航空機操縦士が「カテゴリー3飛行」という有人地帯での目視外飛行を行う際のリスク評価作業を行うためのガイドラインなのですが、

ドローンの一般的な飛行のリスクを網羅的に評価することができる優れたガイドラインであるため、

人口密集地域での建物の外壁検査(カテゴリー2のレベル2飛行)や、測量などの目視外飛行(カテゴリー2のレベル3.0あるいは3.5飛行)におけるリスク評価にも使うことをお勧めしています。

いわばリスク評価作業を行うための共通言語がこの「リスク評価ガイドライン」だと理解してください。

【2】ロバスト性による安全評価

 

この「リスク評価ガイドライン」では、定量的なリスク評価にもとづく安全対策のレベルを決定するために、「ロバスト性」という指標が用いられています。

このロバスト性は、危険な状況変化への対策が効果的であることを評価するための指標であり、リスク評価の結果講じるべき「安全性の水準」と、その対策がどの程度確実に実施されているかを評価する「保証の水準」の2つの要素で決定されます。

この安全の水準を満たし、保証の水準で確実な実行を担保するという考え方です。

(以下ロバスト性のレベル決定)
ロバスト性

安全性の水準と保証の水準のうちのいずれか低い方に準じて、その安全確保措置は評価され、

例えば、中レベルの安全性の措置が、低レベルの水準で保証された場合には、その安全確保措置は低レベルと評価されます。

【3】リスク評価プロセス

 

この「リスク評価ガイドライン」では、以下の手順で運航のリスクを評価して、対策のレベルを決定することが推奨されています。

このガイドラインの記述は特殊な専門用語が多いので、筆者がかみくだいて皆さんにもわかる言葉に置き換えて重要なものだけお伝えすると、

(1)運航計画を明確化する(誰が、いつ、どこを、何を使って、どのように飛行させるか)

(2)地上リスク(地上にいる人や構造物、車などに衝突するリスク)を評価して必要な対策を決定する

(3)空中リスク(空中を飛行する有人航空機や他のドローンなどに衝突するリスク)を評価して必要な対策を決定する

(4)地上リスクと空中リスク以外の運航に関わる安全目標(個々の対策のこと)を決定する
地上リスクと空中リスクを除いた全てのリスクに対する対策を網羅的に評価します。

例えばヒューマンエラー、GPS電波や操縦電波の遮断、急激な気象変動、組織的な問題などから発生するリスクへの対策です。

(5)飛行を予定している空域に隣接するエリアへのリスクを評価する

(6)安全対策を取り入れた運航計画がガイドラインの要求事項を満たしているかどうかを評価する

以上の作業の結果、要求事項を満たしている場合は飛行が可能となります。

(リスク評価プロセスの流れ)
リスク評価プロセスの流れ

以上が航空局が推奨するリスクアセスメントの流れです。

確かに優れたガイドラインではあるのですが、はっきり言って全く初めての人が使いこなすにはかなり難しく、

読みこなそうと正面突破を図っても、途中で挫折すること請け合いです😅💦

なので今回は、このような航空局が推奨するリスクアセスメントの仕組みを知っていただくことに止め、

次回、このガイドラインを誰もが簡単に利用するための取り組みについて解説します。